スポーツ選手にとって、動体視力は、フィジカル、メンタルに次ぐ重要なファクターです。特に、野球(打撃)などでは、キネティック動体視力とダイナミック動体視力が最も重要とされます。
ここでは、キネティック動体視力とダイナミック動体視力を中心に、動体視力の訓練方法を紹介します。
視力は、静止視力と動体視力とに、大きく分類されます。
静止視力は、文字通り静止したものをみる能力で、健康診断などでよく行なわれるランドルト環を用いた視力検査は、この静止視力を検査するものです。
動体視力とは、動くものをみる能力で、主にダイナミック動体視力とキネティック動体視力に分けて考えられます。
ダイナミック動体視力 | 上下左右方向の動体視力 |
キネティック動体視力 | 奥行方向の動体視力 |
ダイナミック動体視力は、上下左右方向の動体視力です。
実際には、上下方向と左右方向とでは、知覚のメカニズムが少し異なるのですが、一般的には、同じ枠組みで考えられます。
ちなみに、パーキンソン病関連疾患のひとつに進行性核上性麻痺という疾患がありますが、この進行性核上性麻痺で、はじめに障害されるのは、上下方向(特に下方向)の眼球運動だけです。
キネティック動体視力は、奥行方向(前後方向)の動体視力です。
静止視力としての奥行きの知覚は、「両目の視差」と「脳の画像処理機能」が協働して行なわれますが、動体視力としての奥行きの知覚では、「両目の視差」はあまり影響しないのではないかと思われます。
「脳の画像処理機能」が奥行きを知覚する仕組みは、複雑です。
たとえば、「心にあるサイズよりも小さいものを遠くにあると感じ、大きなものを近くにあると感じる」や「周りにみえるものによって奥行きの感じ方が変わる」などなどです。
ビルの上に見える月は、近く大きく感じますし、天空にぽつんとある月は、同じ大きさなのに、遠く小さく感じます。
奥行きに関する錯視が多く知られていますが、それらは、脳の画像処理機能の癖を、いわば逆手にとったものです。通常の世界では、この脳の画像処理機能の癖が、奥行きを知覚するために非常に有用なものとなります。
キネティック動体視力では、「両目の視差」よりも、「脳の画像処理機能」の方がより重要になると思われます。
視力の分類方法として、スポーツビジョンがあります。日本には、1986年に紹介されました。
スポーツビジョンは、スポーツ選手にとり、フィジカル、メンタルに次ぐ重要なファクターとして考えられています。
スポーツビジョン研究会によると、スポーツビジョンは次の8項目に分類されます。
特に、野球(打撃)などでは、キネティック動体視力とダイナミック動体視力が最も重要とされます。
静止したものを見る視力。(一般的な視力検査で測られる)
奥行き方向の動体視力。
上下左右方向の動体視力。
視線を速く円滑に動かす能力。
明るさの微妙な違いを識別する能力。
遠近感。相対的な位置関係を認識する能力。
視覚情報を瞬時に認識する能力。
視覚に対する反射神経。
ここで紹介する動体視力の訓練方法は次の3つです。
動体視力の訓練というと、眼筋の運動能力を鍛えるものと考えられがちですが、眼筋を鍛えただけでは、動体視力は良くなりません。「脳の画像処理機能」もいっしょに鍛える必要があります。
ですが、だからといって、それで訓練方法がややこしくなるわけではありません。
ダイナミック動体視力やキネティック動体視力を使う環境をつくって、「みる訓練」を繰り返せばOKです。
この訓練法では、上下方向の訓練にならないのが難点といえば難点ですが、左右方向については有効な訓練方法となります。
頭を横にして行えば、上下方向の訓練にもなりそうなものですが、電車の中でそういった姿勢をとることには違和感があります。
バスや車の車窓からでも良さそうですが、実際に試してみると、適当な対象物が電車ほどには多くないのがわかります。おすすめはやはり電車の車窓からです。
この訓練法の良いところは、なんといっても、準備が要らないという点です。電車通勤であれば、その気になるだけで実行できます。
この訓練法は、非常に有効なものですが、準備が必要なことと、付き合ってくれる投球者が必要なことと、球速、回転数、回転方向などの条件がコントロールしづらいというのが難点です。
あまりに速い球速や、あまりに高い回転数では、訓練の効果がありませんし、逆に遅すぎても効果なしです。
どのくらいの球速、回転数が有効かといえば、それも、現在のその人の動体視力レベルで変わってきてしまいます。
有効な球速と回転数が判ったとしても、その条件での、かつ、適切な軌道を描く投球は、プロ級の投球者でなければ難しいことです。
ですが、プロ級の投球者が付き合ってくれるのであれば、これ以上の訓練法はありません。
なお、シャッターゴーグルを利用すると、より効果的にトレーニングできるといいます。シャッターゴーグルは、ストロボ効果をもつメガネで、液晶でシャッターを高速開閉するものです。
動体視力を鍛えるiPhoneアプリとして、「キネティック動体視力」があります。
「キネティック動体視力」は、その名の通り、キネティック動体視力を鍛えるiPhoneアプリですが、ダイナミック動体視力にも効果があります。
「キネティック動体視力」には、無料版と有料版があります。
無料版と有料版の違いは、広告の有無、難易度レベル、テストモードの有無です。
無料版 | 有料版 |
---|---|
広告有り | 広告無し |
難易度レベル=0~2.5 | 難易度レベル=0~4 |
テストモード無し | テストモード有り |
「キネティック動体視力」には、「テストモード」と「練習モード」が選択できるようになっています。
「テストモード」と「練習モード」との切り替えは、起動画面の左上の選択ボックス(テスト/練習)で行います。
テストの途中に、「練習モード」に切り替えて練習することもできます。この場合、「テストモード」に戻れば、途中からテストを再開できます。
練習モードでは、同じレベルを何度でも連続して練習することができます。
練習モードでの使い方は、簡単で、難易度レベルを選択して、スタートボタンを押すだけです。
六角柱の移動速度と回転速度は、難易度レベルにより決まります。
六角柱の描く軌道は、野球の投球のように毎回ランダムに変化します。
全桁正解で◯、1桁のみ不正解が△、2桁以上不正解が☓と判定します。
数字の順番は関係ありません。2124が正解であれば、1242でも1224でも正解です。
テストモードでは、0から4の5段階の難易度レベルが、順番に各5回づつ、計25回テストされます。
得点は、◯で4点、△で2点、☓で0点が加算され、最高点は100点です。
100点を獲得出来る人は、なかなかいません。ですが、もちろん不可能なわけではなく、スポーツの得意な方で、100点を何度も達成した方もいます。
中には、難易度レベル4では正解できるのに、難易度レベル2や3で、気が抜けてしまうのか不正解となる方もいます。100点獲得には、動体視力の他に集中力も必要なようです。
テストモードでの使い方も簡単で、「スタートボタンをタップして、飛び出してくる六角柱上の数字を読み取り、答える」というテストを25回繰り返すだけです。タイムトライアルではありませんので、途中で中断することもできます。
テスト完了で、スコアが記録され、練習モードに移ります。続けてテストする場合は、左上選択ボックスから、再度テストを選択して行います。
テストを中止したい場合は、画面左下の赤いリセットボタンをタップすることで、リセットできます。
テストのスコアの履歴を確認/編集したい場合には、画面右下のスコアボタンをタップすることで行えます。
効果音を消すには、画面下中央のスピーカーボタンをタップします。タップする毎に、効果音のオン/オフが切り替わります。
「キネティック動体視力」の他にも、動体視力の訓練アプリはあり、いろいろなブログサイトなどで紹介されています。
「キネティック動体視力」には、iPadアプリもあります。「キネティック動体視力 HD」です。
使い方など、基本的には、iPhoneアプリ「キネティック動体視力」と同じですが、スコア表示が大きくわかりやすくなっています。
また、iPad版では、起動画面から六角柱の飛び出す画面への画面遷移は起こりません。
iPadアプリ「キネティック動体視力 HD」
アンドロイドアプリ「キネティック動体視力 Free」 Google Play , 紹介サイト
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